2019年3月

【ルカ福音書6章33節】
自分によくしてくれる人に善いことをしたところで、どんな恵みがあろうか。罪人でも同じことをしている。

人は様々な人間関係の中にあり、相性もあるわけですが、日野原重明氏の著書『生きて いくあなたへ』―105歳どうしても遺したかった言葉―の中で含蓄ある言葉が語られ ていました。「医師をしている中で、多くの患者さん達が病気のおかげで大切なことに 気がついたとおっしゃいます。最初は嫌いだったものと向き合うことによって大切なこ とを発見できるということは、人間同士の関係でも同じことではないでしょうか。」と 言われる。そして、100年以上つきあっている自分自身のことでさえわからないのだ から、他人が僕のことがわからず、嫌いだと言ったとしても当然ではないか。そう考え ると心も楽になる。とも語っています。

フランスの哲学者デリダは、「不可能なものの可能性」と言う概念を、「赦し」を通し て論じている。赦し得ないものは赦すことができないということは、それ自体は自明で 全く矛盾のない論理である。しかし、デリダは、逆の論理を展開する。「赦し得るもの しか赦さないような赦しとは、何であろうか」と。それは不可能なものが可能なものに 転じるということを意味してはいない。赦すことができないというその不可能性が不可 能としてあり続けるからこそ、デリダによれば、赦しは可能なのである。

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