2023年6月

【詩編84編6節】いかに幸いなことでしょう。あなたによって勇気を出し、心に広い道を見ている人は。

 『ハイデルベルク信仰問答』は、私たちが住んでいるこの世界を「悩みの多い世」(竹森満佐一訳)と呼んでいます(問26)。元の言葉を直訳すれば「嘆きの谷」であり、詩編84編7節の「嘆きの谷を通るときも、そこを泉とするでしょう。」に由来しています。つまり、私たちは文字通り、嘆きの谷の中に住んでいる住民なのです(『神学の小径Ⅴ』芳賀力著)。人は、信仰者であるかそうでないかに関わらず、思いがけない苦難に遭遇します。私たちが人生における嘆きの谷、苦難の谷を過ごすとき、神は私たちに力を与えて下さるのです。どうしてこんなことが起こるのかと思うような体験、そのような険しく細い道であっても必ず広い道に変わるのです。湧き上がる泉が、わたしたちの命をよみがえらせます。その人たちは力を増し加えられつつ良い道を進み、ついに神に出会うと約束されています。しかし、キリストにおいて救いがすでに起こったというのに、なぜまだ嘆きの谷の中にいるのだろう。それは、私たちが中間時にいる、すでにといまだの時の間を生きているからだと言う。とはいえ私たちは、イエス・キリストの登場以来、世界史の潮目が変わったことを知っている。旧約の預言者の見た希望の光は今、燦々と輝いているのです。

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